村上春樹の文章が好きです。
表現が心地よいのは言わずもがなですが、
モノゴトを見る角度が素晴らしくユニークなのが、一番好きな理由です。
世間って、自分が想像するよりも数百倍複雑で、
色んな思惑が渦巻いていて、一つひとつが利己的で、
なのに、一つひとつが、万人のための思惑のフリをしていて、
みんなそれに気づいていて、声を上げる必要があるのに口を閉ざしたままでいる。
口に出した瞬間、負けが決まってしまうことが分かっているのではないかと疑ってしまうほどの不自然さだ。
全てが表面の世界で成り立ってはいないのだろう。
鏡の中の世界で起こっている無数のドラマがあるのだろう。
数億の思惑の裏に数百億の思惑が隠れていて、見えない手が今か今かと沼へと引き釣り込もうと準備している。
そんな事を考えていると、何もかも、誰ひとりも本当に信用することなんてできないじゃないか。
と、そんな事を考えている時に、「ひつじをめぐる冒険」に登場する一節の文章が、私の偏屈な思考を揉みほぐしてくれた。
世界―
そのことばはいつも僕に
象と亀が懸命に支えている巨大な円盤を
思いださせた。
象は亀の役割を理解できず、
亀は象の役割を理解できず、
そしてそのどちらもが
世界というものを理解できずにいるのだ。
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